イラク民間人の死者は約10万人に、米研究者らが試算 2004.10.29 Web posted at:
22:02 JST
- CNN
ロンドン――昨年3月の米軍侵攻以来、イラク民間人の死亡率は急激に上昇し、死者数は計10万人近くに上ったとの研究結果がこのほど発表された。米国とイラクの研究者が調査をまとめ、医学誌ランセットの電子版で報告した。
過去1年半にイラクで死亡した民間人の数について公的な統計はないが、民間団体などの推定では1−3万人とされてきた。今回の研究では、米国のジョンズ・ホプキンス大とコロンビア大、イラクのムスタンシリヤ大による共同チームが、9月にイラク国内の約1000世帯で聞き取り調査を実施。02年1月から米軍侵攻までの時期と、侵攻後の期間を対象に、家族の出生や死亡の状況を尋ねた。
その結果、米軍侵攻後の民間人の死亡率は侵攻前の2・5倍に増えたことが判明。米軍と武装勢力との戦闘が続く中部ファルージャでの死亡率が特に高くなっていたため、これを除外した率も算出したが、それでも1・5倍に上った。これを死者数に換算すると、9万8000人以上になるという。
また、侵攻前の主な死因は心臓病や脳卒中、慢性疾患などだったのに対し、侵攻後は病死以外の暴力による死が58倍に跳ね上がった。その多くは、米軍の空爆で死亡した女性や子どもが占めているという。
チームを率いたジョンズ・ホプキンス大のレス・ロバーツ氏は、「私は反戦を主張してきたが、科学的な数字は立場の違いを超えたもの」と説明する。またランセットの編集者、リチャード・ホートン氏はこの結果を受け、「公衆衛生学の見地から、イラク侵攻は政治的、軍事的ミスだったことが明らかになった」と述べた。
研究の調査対象となった世帯の数は限られているが、これは専門家の間で信頼性が認められている方法で、90年代後半、コソボ紛争による死者を推定する際にも使われたという。ただ一部の研究者からは、調査がイラクの中でも危険な場所にかたよっていた可能性があるとの指摘も出ている。
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